クリムト展で印象に残った作品

東京都美術館で開催されている「クリムト展 ウィーンと日本1900」に行った。

開催期間は2019年4月23日(火)~7月10日(水)。

グスタフ・クリムト没後100年の記念展。芸術一家である兄弟の作品や、同時代にオーストリアでブームとなった日本美術に影響を受けた作品などが展示されている。

 

クリムト兄弟(写真)

1890年くらいに撮影されたクリムト兄弟の写真。この頃になるとちゃんと写真がある。

左から長男のグスタフ・クリムト、次男のエルンスト・クリムト、三男ゲオルク・クリムトである。

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Gustav Klimt / Ernst Klimt / Georg Klimt

 

ヘレーネ・クリムトの肖像グスタフ・クリムト

今でいうボブのような髪型に白いドレスを着た若い娘がまっすぐ前を見ている。その娘を真横から描いた構図。

血色のよい肌、髪の毛は1本1本が感じられる。絵全体で使われて色が少なくシンプルなので、より一層、人物の存在感を引き立てているように思う。

美術館で見た時の印象は、まだ少女ではあるものの、柔らかくも凛とした雰囲気を感じた。きっと成長したら美しい女性になるだろう。

後になって美術書の解説を見て驚いたのは、弟エルンストの娘であるこの少女が当時まだ6歳だったということ。

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Helene klimt (Gustav Klimt)

 

甲冑のある静物(エルンスト・クリムト

甲冑の金属の描写に見とれた。光が当たって明るく反射している箇所なんかは作品の立体感を際立たせている。

暗めの背景と相まって、甲冑が浮き上がっているような錯覚を覚える。視覚から確かに金属の質感を感じることができる。

甲冑が置かれている絨毯の模様や角が擦れて色が抜けているような細部の描写にも感動した。

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Still Life with Armour (Ernst Klimt)

 

フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ(エルンスト・クリムト

西洋画ではよく天使(背中に翼の生えた裸の子供が浮いている)が登場するので驚くことはないけれど、桜の花が描かれているのは珍しいと思った。

よく見ると天使の翼も白く力強いものではなく、小鳥のように小ぶり。

当時オーストリアでは日本美術のブームがあったようで、作品への影響も少なくないのではないかと思った。

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Francesca da Rimini and Paolo (Ernst Krimt)

 

装飾的な花(ハンス・マカルト)

クリムトの作品ではないが、高さ2mほどのキャンパスに堂々と描かれており存在感を放っていた。

適切な表現ができないが、稲のような植物の葉(左上部に描かれた)は油彩によって描かれることで立体的でツヤあり美しかった。

図録の解説によれば日本の生け花に着想を得て描かれているらしく、伝統的な花卉画(かきが)とは異なった配置だとのこと。

使われている草花の種類が多いだけでなく、単に花束としてのひとまとめとは明らかに異なっている様は確かに装飾的だ。

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Decorative Flower Bouquet (Hans Makart)

 

ユディトIグスタフ・クリムト

旧約聖書外典の一場面が主題となっていて、宝飾で着飾った女性が胸元を晒し男の生首を両手で抱えている。

笑ってはいないが微笑んでいるような、目的を果たし解き放たれたような、微細な感情が表現されていると思った。

金箔が使われているためか、描かれた宝飾を含めて作品全体の雰囲気が生々しいものになっているのではないだろうか。

額縁は一番下の弟ゲオルクが制作している。

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Judith I (Gustav Klimt)

 

アッター湖畔のカンマー城IIIグスタフ・クリムト

赤茶色の屋根や草花、湖の水面に映りこんだ木々や建物が、点や線による描写が印象派のような作品。

美術館で作品を眺めていると作者の描く作品の特徴がだんだんと分かってくるが、グスタフ・クリムトはこういうタイプの絵も描く人だったのかと驚いた。

図録の解説によれば、この作品は自然と建築の調和がテーマの一つになっているようで、当時、クリムトは望遠鏡を使いながらこの絵を描いたのではないかと推測されている。

中央に描かれた黄色い壁の建物とその奥にあるはずの赤茶色の屋根の建物の距離感に違和感を感じた。

望遠レンズによって得られる圧縮効果を表現しているのだろうか。

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Schloss Kammer on Lake Attersee III (Gustav Klimt)

 

今回は迷わず図録を購入した。帰ってからも、美術展が終わってからもいつでも作品を見ることができるのが良い。

めったに開くことはないだろうけど。

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公式図録