奇想の系譜展で印象に残った作品について
つい先日まで、東京都美術館で開催されていた「奇想の系譜展」では江戸の絵画が展示されていた(2019年4月7日(日)に終了)。
絵画といっても西洋画のようにキャンパスではなく、襖(ふすま)や屏風(びょうぶ)、掛け軸に描かれている。
見に行ってから、すこし時間がたっているので実物をみた時の気持ちの高ぶりは落ち着いてしまっているが、今、改めてあの時見た中でよかったなぁと感じる作品を書いておこうと思う。
作者:伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)
作品は鶏が主役の絵が多かった。
・海棠目白図(かいどうめじろず)
むくむくまるまるした目白が、木の枝にとまっている。
10羽ほどぴったりと横一列ならんでいる様に、可愛らしくてキュンキュンしてしまう。
・虎図(とらず)
ぎょろっとした目の虎が手のひらをぺろぺろしている構図。
感動したのは虎の毛並みの描写。
近くでよく見ると、0.3ミリくらいのボールぺンで描いたように、細かくたくさんの線で毛が表現されている。
少し離れて見ると虎の固く短い毛の質感を見事に感じられる。
絵師の細かな仕事ぶりには唸る。
・石榴雄鶏図(ざくろゆうけいず)
鶏とざくろの水墨画。墨の濃淡による遠近感や、長い尾と片足を上げた鶏には確かな躍動感がある。
作者:長沢芦雪(ながさわろせつ)
襖や屏風に描かれた作品が多かった。
・白象黒牛図屏風(はくぞうこくぎゅうずびょうぶ)
大きな屏風が2帖。1つは白い像、もう1つは黒い牛、どちらもしゃがんだ状態でめいっぱい巨大に描かれている。
象の背中にはいたずら好きそうな顔した黒いカラスが2羽、牛の腹には真っ白な小ちゃな犬がコロンと1匹もたれかかる。
この作品のおもしろいところは、対比。
黒と白、大と小。1つの屏風の中にその対比が表現されいる。2帖並んだ様は迫力満点。
小ちゃな犬はグッズ(マグネットだったかなぁ)になって売られていた。
作者:岩佐又兵衛(いわさまたべえ)
絵巻の作品が多かった。
・山中常盤物語絵巻 第四巻(やまなかときわものがたりえまき)
初めて絵巻の実物を見た。巻物が広げられた状態で展示は10mくらいの長さになっていた。
武装した悪者たちがやってきて、着物を脱がされて裸になった女が切り殺されるシーンだった。
内容は置いておいて、絵巻の魅力にハマった。
1枚の紙(実際はつぎはぎされている)に同じ人物が何度も出てくるのだけれど、場面と場面がシームレス(継ぎ目なし)な感じで見れる。
本のページをめくりながらストーリーを追っていくのとは違う感覚が新鮮だったからかもしれない。
奇想の系譜展では、江戸絵画の魅力を知り、特に絵巻に感動した。
あまりに感動し、普段は興味のなかった公式図録も買ってしまった。
実物をみているので、当時の感動が蘇り、思い出に浸ることができて案外よいことに気づく。
調べてみると、これまで行った美術展の図録もネットで購入できるので買おうかな~と思いつつ、送料かかるのでこれからは行った先で買うべきだと反省。
今回の美術展には関係ないけど、絵巻を漫画風にした電子書籍を発見(しかも無料)!!
Comic Walker(コミックウォーカー)というKADOKAWAの無料漫画が閲覧できる公式サイト。
・酒天童子繪巻(しゅてんどうじえまき)
・道成寺縁起(どうじょうじえんぎ)